十文字キワが写真を撮影した10月11日現在も倒壊した鉄骨やネットは撤去されていない。今週末にかけて関東に接近する台風19号による二次災害に厳重な警戒が必要である。
本記事では現場取材を通じて被害状況や鉄骨の構造に着目し、ゴルフ場倒壊の原因推定を実施した。その結果、当該ゴルフ場の鉄骨構造が倒壊を誘発したことが示唆された。
ゴルフ場について
住所:千葉県市原市五井5361番地 「市原ゴルフガーデン」
国道16号からアリオ市原や市原市役所に向かう道路沿いに位置している。
10月11日現在営業していない。事務所入口には「休業中」と掲示されている。
国道16号からアリオ市原や市原市役所に向かう道路沿いに位置している。
10月11日現在営業していない。事務所入口には「休業中」と掲示されている。
被害状況について
ゴルフ場のサイドのネットは下図の点線のように張られている。台風15号では海側(西側)のネットが矢印の方向に倒壊した。
Google Earthの3Dモデルを利用すると倒壊範囲は以下のように示される。
各方向からの写真を以下に示す。
ネット及び鉄骨が住宅側に倒れ、複数の家屋に覆いかぶさっていることが確認できる。
①側(北側)から撮影した写真
②側(南側)から撮影した写真
倒壊の原因分析
まずは、倒壊のメカニズムを分析する。
報道各社の航空写真と現地調査の結果から、倒壊した鉄骨とネットは次の3つに分類することができる。
A:②側上部の鉄骨破断が見られる部分
B:②側の鉄骨破断が見られない部分
C:①側の鉄骨破断が見られない部分
我々はAが倒壊のトリガーになったと分析した。
特筆すべき点は、B・Cは概ね原型を保った状態で住宅側に倒壊していることである。この状況から、我々は強風によりAを固定するボルトが破断し、それに引っ張られる形でBおよびCが倒壊したと推定した。
推定される倒壊のメカニズムは以下の通りである。
報道各社の航空写真と現地調査の結果から、倒壊した鉄骨とネットは次の3つに分類することができる。
A:②側上部の鉄骨破断が見られる部分
B:②側の鉄骨破断が見られない部分
C:①側の鉄骨破断が見られない部分
我々はAが倒壊のトリガーになったと分析した。
特筆すべき点は、B・Cは概ね原型を保った状態で住宅側に倒壊していることである。この状況から、我々は強風によりAを固定するボルトが破断し、それに引っ張られる形でBおよびCが倒壊したと推定した。
推定される倒壊のメカニズムは以下の通りである。
1. 強風によりAの支柱を固定するボルトが破断し、鉄骨が住宅側へ垂れ下がる
2. AによりBの重心が住宅側に傾き不安定な状態になる
2. AによりBの重心が住宅側に傾き不安定な状態になる
3. 垂れ下がった鉄骨とネットが繰り返し強風に煽られることにより、Bの基礎を固定するボルトや鉄筋コンクリートが破断し住宅側へ倒壊
4. AとBに引っ張られ、Cの重心が住宅側に寄り不安定な状態になる
5. 強風に煽られ①側のネットが倒壊
気象条件
続いて気象条件を確認する。
気象庁作成の2019年9月9日 3時の天気図を引用した。
台風15号は9月9日5時頃、中心気圧960hPaで千葉市付近に上陸。
北半球において台風はコリオリの力により反時計回りに渦を巻く。このため台風の東側では台風の接近に伴い風向きが北→東→南→西と変化する。
したがって、台風が最接近したとき、台風の西側に位置する房総半島は東風に見舞われたことが推測される。
ゴルフ場の鉄骨は西側に倒壊しており、台風による東風による影響を受け倒壊したことが分かる。
気象庁作成の2019年9月9日 3時の天気図を引用した。
台風15号は9月9日5時頃、中心気圧960hPaで千葉市付近に上陸。
北半球において台風はコリオリの力により反時計回りに渦を巻く。このため台風の東側では台風の接近に伴い風向きが北→東→南→西と変化する。
したがって、台風が最接近したとき、台風の西側に位置する房総半島は東風に見舞われたことが推測される。
ゴルフ場の鉄骨は西側に倒壊しており、台風による東風による影響を受け倒壊したことが分かる。
また、アメダスのデータはこの理論と一致しており、千葉に接近した午前4時〜6時にかけて平均20m/s以上の強風に断続的さらされたことが分かる。
さらに、観測史上1位となる瞬間最大風速57.5m/s(=207km/h)を午前4時28分に記録しており、鉄骨を支えるボルトが破断するのに十分であろう。
しかし、他のゴルフ場や建物の大規模な倒壊が生じていないのは不自然ではないだろうか。この点について、我々は市原ゴルフガーデンの鉄骨構造に倒壊を誘発するような特徴があったと考えている。
鉄骨の構造について
最後に鉄骨の構造について述べる。
当該ゴルフ場の西側の鉄骨は、下図のように3つに分類することができる。
鉄骨が当初からこのような構造で設計されたのか、増改築によりこのような構造をとっているのか詳細は不明である。
一般的にabcの接合部は応力集中が生じやすいといえる。このケースでは、bの②側(今回倒壊したA)が構造的に最も不安定である。
そのため、ネットが強風を受けることで設計条件以上の応力がAに作用することにより、ボルトの破断が生じたと考えられる。
ボルトの破断が疲労破壊によるものか、脆性破壊によるものかは今後の分析が待たれるが、構造的に問題があるのは確実であろう。
そのため、ネットが強風を受けることで設計条件以上の応力がAに作用することにより、ボルトの破断が生じたと考えられる。
ボルトの破断が疲労破壊によるものか、脆性破壊によるものかは今後の分析が待たれるが、構造的に問題があるのは確実であろう。
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